帯広百年記念館の長谷仁美（はせ ひとみ）さんにアイヌ文化について教えて頂きます。

今月30日まで帯広百年記念館で開催されている
アイヌの工芸－東北のコレクションを中心に－が開かれています。

長谷さん、よろしくお願いします。



―アイヌの工芸－東北のコレクションを中心－はどのような企画展でしょうか。


長谷さん
東北の博物館等にコレクションされているアイヌ民族に関連する品々を展示しています。



―素朴な疑問なのですが、北海道の博物館に収蔵されているものと、
東北の博物館に収蔵されているものの間に違いがあるのでしょうか。


長谷さん
アイヌ民族が作った伝統的な衣服であるアットゥㇱは
オヒョウやシナノキの樹皮の内皮繊維で作られています。
しかし、例えば東北の下北には
和人の手によって作られたとされる麻製のアットゥㇱが発見されているなど
異なる点があります。



―見所はどのようなところでしょうか。


長谷さん
３つの形を変えた「蝦夷錦」を是非ご覧頂きたいと思います。

「蝦夷錦」は中国の清王朝の役人が来ていた制服です。
清からアムール川の中流、下流域の先住民族に渡り、
やがて交易でアイヌ民族に渡り、さらにアイヌ民族から和人に渡りました。

今回の企画展では、
完成された服の状態の「蝦夷錦」だけでなく、
加工するために切り裂かれた「蝦夷錦」の端裂（はぎれ）
が初公開されている他、
さらに、仏教寺院や仏壇に置かれる
卓の天板の下にはさむ敷物である打敷（うちしき）を展示しています。
打敷は蝦夷錦の生地が加工されたものです。　

端裂の状態で見つかることはほとんどなく、
ましてや、それを順に追って見られることもほとんどありません。



―ところで、十勝のアイヌの人たちはどのような生活をしていたのですか？


長谷さん
川沿いに生活しており、
コタンという村がたくさん形成されていました。

昔、チョウザメが十勝川を昇っていたという話もあります。



―アイヌ民族って北海道に暮らしていたのですよね？


近世では樺太と千島、北海道、東北に暮らしていました。



―すると今回の展示は東北のアイヌの工芸品を展示しているということですか？


長谷さん
いいえ、東北アイヌのものではありません。
北海道アイヌのものがほぼ中心で、樺太アイヌのものもいくつか展示しています。



―北海道アイヌのものが東北に収蔵されているのはなぜですか？


経緯等は様々ですが、例えば昨年お亡くなりになった青森出身の民俗民具研究者
田中忠三郎（たなか ちゅうざぶろう）さんが
収集されたということがあります。
民具の専門家だったのですが、
やがてアイヌ民具にも注目され収集・保存活動を行われました。
田中さんは刺し子など布に特にご関心を持たれていたようです。

オヒョウの木の内皮で作られたアイヌの伝統的な衣服アットゥㇱが
「木の皮で織り上げた昔の雨合羽」として和人が活用していたことを知り、
さらに意欲的に収集されたようです。

アットゥㇱはゴワゴワして見えますが、
樹皮の内皮繊維でできていて実は柔らかいんですね。
柔らかく、水はけがよく、濡れてもすぐに乾きやすいんです。

北前船の船員がステータスとして着ていた言われています。
他の文化に身を飾り、かつ機能性がある衣服だったんですね。

アイヌ民族は狭い地域で暮らしていたんじゃないかと思われがちなのですが、
交易の民なんですね。そのような姿を垣間見れる企画展になっています。





―高木は福井県出身。北前船の船員がアットゥㇱをまとった活き活きとした姿が想像できるようです。北海道と繋がった感じもします。ありがとうございます。



それでは最後にメッセージをお願いします。


長谷さん
22日14時から帯広百年記念館で
帯広美術館の五十嵐学芸員を迎えてギャラリートークを行います。
ご家族、お友達をお誘いの上、是非お越し下さい。


―ありがとうございました。